感情を支配する低血糖症


感情の浮き沈みが激しい人は、血糖値の上がり下がりが激しい人なのかもしれません。

 

反対に穏やかな人は、血糖値の動きも穏やかと言えるのではないでしょうか。 あまりピンとこない話かもしれませんが、あながちこれはでたらめでもありません。

 

持って生まれた性格もあるでしょうが、私たちの体は血糖値の変動に伴って色々なホルモンを放出していて、それに反応してしまうのです。

 

ご存じのようにホルモンが人に与える影響は凄まじく、成長期の頃などを思い出してもらえれば分かりますが、頭で考えていることとは裏腹なことをしてしまったり、言ってしまったりするものです。

 

思春期の頃に限らず、なんだか無性にイライラしたり、訳もなく反抗したくなったりすることもあるでしょう。

 

空腹時が一番ピンとくるかもしれません。

 

恋人とデートしているとき、お腹が空いていたというのに何を食べるか決まらないときのイライラは、きっと多くの人が経験しているはずです。

 

反対にお腹が満ち足りているとき、怒るのは難しい。交渉事に食事が欠かせない理由の一つです。

 

私たちは理性的に生きているつもりでも、お腹の状態に影響を受け、ホルモンによって支配されている面があるのです。

 

しかし、これに影響を受けすぎて、酷く落ち込んでやけに静かだと思ったら、イライラとしだして急に怒り出してしまうような感情の起伏の激しい人がいます。イライラというのも言いようですが、パニックやヒステリーに近い感情の昂ぶりが見られることもある。

 

さっきまで機嫌が良かったのに何かの拍子に突然不機嫌になるという場面、ご自分でも経験があるかもしれませんが、身の回りを見渡してみればけっこう頻繁に見かけるのではないでしょうか。

 

その人の性格だったり、はっきりした理由があったりすれば良いのですが、もしそれが 血糖値の変動に伴って起こる感情の変化だと言うなら、少し気をつけなくてはなりません。

 

なぜなら、そんな人は もう既に低血糖症という病気になってしまっているかもしれません。

 

血糖値を調節する機能

 

低血糖症の前に、これほど単純な私たちの体の中で、ホルモンがどのように血糖値調節に関わっているのかということをお話しておこうと思います。

 

食事をすると、 血糖値は上がります。放っておくと上がりすぎてしまうので、すい臓が インシュリンというホルモンを出して、適度な血糖値に抑えてくれます。

 

反対にお腹が空くと、 アドレナリンやノルアドレナリンというホルモンを分泌し、血糖値を上げようとします。このアドレナリンなどは、聞いたことがあるかもしれませんが、人を興奮状態にして、攻撃的にします。

 

アドレナリンは戦闘ホルモンなどと呼ばれることがあるように、私たちはしっかりしなければならないときに出てくれるホルモンです。集中しなければならないとき、恐怖に襲われて逃げなければならないときなど、ここ一番のときに出てくれるのです。

 

具体的には、血糖値を上げるほかにも血流を促し、心拍を増大させ、瞳孔を拡大させます。また、痛覚やストレスに対する感受性を落とします。

 

まさに戦うための興奮剤。私たちはコンビニで栄養ドリンクを買わなくても、体内でこんなに便利なものを分泌できるのですね。

 

しかし、日常でそれほど危機的な状況はなかなかありません。戦わなくてはならない場面の「戦い」というのは、仕事などでもよく比喩的に用いられる表現ですが、しくじれば命に関わるようなことをしている人は稀でしょう。

 

しかし私たちの体は、空腹も危機と捉え、アドレナリンを出すのです。まあ後で何か食べればいいやと考えないあたり、脳みその原始的な一面を垣間見られるような気がします。

 

そのおかげで、お腹が空くとイライラしてしまう。

 

ここまでは誰にでもあることなのですが、糖分過多などの食生活の乱れが引き金となってこの感情が異常なまでに揺れ動いてしまうことがあります。

 

血糖値を下げるインシュリンと、血糖値を上げるアドレナリンなどのホルモンの、短時間での大量の放出が、その人の感情を揺さぶるのです。

 

これは 低血糖症の症状のひとつです。しかし、問題はどこからが異常かということですよね。

 

 

 

感情を乱す食生活

 

どのような食生活が血糖値の乱上下を生み、正常な精神を乱すかというと、よく聞く話かもしれませんが、 糖分の摂りすぎです。それもお菓子やジュースなどに含まれる精製された砂糖。

 

精製された砂糖は、とても美味しいのでお菓子やジュース、または料理の味付けなどにふんだんに使われていますが、吸収されやすく、血糖値を急激に上げてしまうと言われています。

 

血糖値が急激に上がると、インシュリンが慌てて出てきて血糖値を下げようとします。普通はこれで解決なのですが、あまり頻繁にこのようなことがあると、インシュリンを出すすい臓も疲れてしまいますし、ときには 適度なインシュリンの量を間違えてしまうこともあります。

 

とにかくすぐに上がりすぎた血糖値を下げる必要がありますから、大量のインシュリンが体を巡り、血糖値を急激に下げることになるのです。ときには下げすぎてしまうこともある。

 

このようなエラーが起こりやすくなり、 血糖値を正常な数値で維持できなくなる病気が低血糖症です。糖尿病はインシュリンの力やそれを受け取る感受性が弱まり血糖値が中々下がらなくなる病気ですが、低血糖症はその反対とも言える病気です。

 

そしてその落ち着きのなさが私たちの脳みそをパニックに追いやる原因となってしまいます。パニック状態に加え、急激に下がった血糖値を上げようとしてアドレナリンなどのホルモンも急激に分泌されますから、それが私たちの感情をいたずらに翻弄するのです。

 

おかげで、低血糖状態に陥りやすくなった人は、例えば急に心拍が上がり、熱くなり、外見的にもパニックのようになります。

 

そのようなとき、甘いものを食べたくなるのも低血糖症の特徴で、甘いものを食べれば、とりあえず血糖値は上がりますからアドレナリンなどのホルモンによる影響は一時的に回避できる。

 

しかし、急激に上げた血糖値はまた急激に下がりますから、またイライラとしてしまいますし、変な緊張感や不安を感じてしまうこともあります。

 

こうした悪循環を生む食生活が、どんどんすい臓の疲労を溜めていき、 血糖値のコントロールができなくなっていくのです。

 

 

どこからが異常なのか

 

明らかにパニックに陥り、急に切れることがあると言った場合はご自分でも異常だなと気付かれるかもしれませんが、上述したように、空腹時にイライラするくらいのことは誰にでもあります。

 

疲れたら甘いものを食べたくなるのも、きっと自然なことですよね。

 

しかし、見分ける方法としては曖昧かもしれませんがどれくらい甘いものを欲するかで分かるかもしれません。

 

「ああ、何か甘いものでも食べたいなあ」は普通ですが、発作的な衝動に駆られて甘いものを求めるなら異常です。

 

実際、糖尿病を患っている方は突然の低血糖状態に陥ってしまう(血糖値の調節機能が十分でないので、糖尿病は低血糖との闘いでもあります)ことに備えて飴などを持ち歩いていますが、そこまでいくと甘いものを求めるという悠長なレベルではありません。

 

本当に急激に血糖値が下がると、動悸、冷や汗、そして昏倒へと繋がり、ときには命に関わることもある。糖分が薬より大事になることもあるのです。

 

さすがにそこまで甘いもの欲してないと思ったでしょうか。しかし、糖分というのは依存性、中毒性があるといいますから、自分でも気付かないうちにけっこうな量を消費しているかもしれません。

 

甘いものを食べることが習慣化しており、気付いていないのかもしれませんが、よく考えてみるとなんだかんだ毎日なんらかのお菓子を食べているということはありませんか?

 

今日からその習慣をやめろと言えば、果たして簡単にやめられるよと言えるでしょうか。

 

実際、あまり 自信がないというなら、それで十分低血糖症に陥っている可能性が考えられます。

 

なぜなら、糖分の依存性というのは、先ほど少しお話した血糖値の上下と関係があり、つい甘いものに手が伸びてしまうのはまさに血糖値が下がることに耐えられない状態だからです。

 

食後に甘いものを食べなければ落ち着かないという気持ちも分かりますが、甘いものは別腹という言葉に甘えて、必要以上のカロリーを摂っていないでしょうか。

 

このような状態こそが、血糖が下がったときに放出されるホルモンに少なからず影響された状態でしょうし、体がそれに敏感に反応してしまっている状態なのです。

 

 

それでも異常かどうかは分からない

 

え、じゃあ食後に甘いもの食べたくなるともう異常なの?

 

そういう訳ではありません。

 

しかし食後にデザートを食べる習慣を当たり前と思っていたり、いつも気がつけば甘いものに手を伸ばしていたりという習慣がある人は、糖に依存している可能性がありますし、糖に依存しているということは血糖値の上下に伴ってホルモンに支配されている可能性がある。

 

ホルモンに振り回されているということは血糖値の上下が安定していない可能性があるので、低血糖症に陥っているか、これからなる可能性があるということです。

 

つまり、まだその可能性があるというだけで、その状態が低血糖症である証拠だとは言えません。

 

結局のところ、低血糖症かどうかは血糖値を測らなければ分からないのです。

 

そうは言っても、例えば血糖値測定器を使って自分で異常を判断できるかと言えばそうでもありません。

 

ご自宅で測定して、どのように血糖値が変動するのかを把握しておくことは糖尿病予防にも低血糖症予防にも大変有効ですが、低血糖症であると自分で判断するのは非常に難しいです。

 

なぜなら、血糖値は一日のうちで(正常値の範囲内でなら)大きく変動するのは当たり前ですし、体調や食事の内容によってそのふり幅や変動のスピードが変わることも当たり前だからです。

 

低血糖症が疑われる場合、自宅でが活躍する場面というのは、例えば緩やかな血糖値の変動を目指した食事を研究するとき、でしょうか。

 

つまり、確かにお腹の減り具合によって感情が不安定になる、甘いものを欲することがあるという人。しかし病院に行くほどでもないかなという方は、血糖値測定器を使って血糖値の上限と下限の差を少なくすることを心がければ、心も穏やかになるかもしれないということです。

 

低血糖症に心当たりがあるなら病院に行ってくださいと言いたいところですが、自分だったらと考えてみても、動悸やパニック状態など困った事態に陥らない限り病院にはいかないだろうなと思います。

 

せいぜい、これからはちょっと甘いもの食べ過ぎないように気をつけようと思うくらいでしょう。

 

「甘いもの好きだし、低血糖症って言うのがあるって聞いて、確かにちょっと空腹のときイライラしちゃうし心配だなと思って、血糖値を、あの、測って欲しくて、来ました」と病院で言うだろうか、と考えればやはり行きづらい。

 

「そんなの当たり前だよ」って言われたらどうしよう、恥ずかしい、と思ってしまいます。

 

だから自宅で気をつけられるものなら気をつけたい。その指標となるものとしては、血糖値測定器はあると便利でしょう。

 

心を穏やかに保ちたいから血糖値を穏やかに保つ。そう意識することで、低血糖症は防げるかもしれません。

 

もちろん、あまりに感情の動きが激しくて、それが食事の影響だと思うなら迷わず病院に行ってください。既に低血糖症に陥っている可能性がありますし、病院に行かなければ正しい診断は出来ません。

 

 

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